「体調が悪くなったのでホテルで休憩していただけ」という言い訳は裁判で通用するのか!?
ホテルに行ったことがばれた時、「休憩しただけで、何もしていない」という、全く信憑性のない典型的な言い訳があります。はたしてこの言い訳はどこまで有効なのでしょうか。
私が代理人として訴えを提起した裁判の実例をご紹介します。
ラブホテルに入るとはどういうことか -事実上の推定-
下の記事の中で、ラブホテルに入るという事実にはどのような意味があるのかを述べました。
そして、ラブホテルに入ると、性交渉があったという事実推定が働くため、体調が悪くなったという反論だけでは、この推定は覆せないと結論づけました。
体調が悪くなったというのであれば、それなりの証拠が必要であり、その証拠が出せないのならば、性交渉があったと認定されるということです。
ラブホテルに入った事実についての裁判所の対応
事件の概要
私の依頼人は男性で、妻(訴訟の時点では離婚が成立していましたので、以下「元妻」と記載します。)が浮気をしたとして、浮気相手の男性に対する慰謝料を請求するため、訴訟を提起しました。
訴訟提起前に、相手の代理人と数か月にわたって交渉を行ったのですが、結局和解はできませんでした。相手が、不貞行為の事実を完全に否定したからです。
こちらには、探偵の調査報告書という証拠がありました。元妻と浮気相手が一緒に食事をしたり散歩をしたりした後、ラブホテルに入り、約3時間後にホテルから出てくるところをとらえた写真や動画でした。
浮気相手の男性は、ラブホテルに入った事実は認めながらも、それは元妻の体調が悪くなったからだと強硬に主張してきました。
2人だけで食事をしていたのは、元妻から、依頼者の男性と離婚したいと思っていると相談されたため、話を聞いていたのだという説明でした。
双方の主張
原告であるこちらの主張は単純です。
というものです。一方、被告の反論は次のようなものでした。
この反論に対し、原告は次のとおり再反論しました。
これに対しては、被告が提出した元妻の陳述書に以下の記載がありました。
判決
裁判所は、不貞行為はなかったという被告の主張を認めませんでした。この部分についての判決を要約すると、次のようになります。
結局、被告は元妻の体調が悪かったとは言うものの、それを裏付ける証拠が出せなかったため、「ラブホテルに入った=性交渉があった」という事実上の推定を覆せなかったということです。
逆に言うと、ラブホテルに入った証拠があれば必ず勝てるという訳ではなく、体調が悪かったということが立証できる反対の証拠を出されると、事実上の推定は覆り、不貞行為があったかどうかが不明という判断がなされ、請求が認められなくなるということです。
結論
「体調が悪くなったのでホテルで休憩していただけ」という言い訳は裁判で通用するのかという問題の結論としては、原則としては通用しない。ただし、例外的に、体調が悪くなったという証拠があれば、有効になることもある、ということです。
ところで、この裁判ですが、実は、私にとってはより重大な問題を含んでいました。
ラブホテルに入ったという証拠がある時点で、不貞行為がなかったという反論は採用されないと思っていましたので、今回の論点はさほど重視していなかったのです。
それよりも、事件の説明で少し触れましたが、元妻が、原告と離婚したいと考えていたという点が問題でした。いわゆる婚姻関係の破綻です。
婚姻関係の破綻については下の記事で書きました。
では、本裁判の中で、婚姻関係の破綻がどのように扱われたのか?記事を改めて詳細に説明したいと思います。