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浮気・不倫の慰謝料請求や養育費を支払ってもらうためのブログ

浮気・不倫慰謝料請求の問題点 婚姻関係の破綻とは

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浮気の慰謝料請求には、いくつかの問題や法律的に難しい部分を含んでいます。そのあたりを少し説明します。

婚姻関係の破綻は慰謝料請求に対する切り札?

浮気の慰謝料請求をする場合に頻出する争点が、婚姻関係の破綻という問題です。具体的にはどういうことなのでしょうか。

慰謝料請求の条件と最高裁平成8年3月26日判決

下の記事でお伝えしたとおり、慰謝料請求をするには、浮気をした配偶者と浮気相手のいずれを対象にする場合でも、婚姻関係が破綻していないことが条件になります。

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平成8年3月26日の最高裁判決は、以下のように判断しています。

Aの配偶者Bと第三者Cが肉体関係を持った場合において、AとBとの婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、Cは、Aに対して不法行為責任を負わない。

つまり、浮気をした配偶者や浮気相手に慰謝料請求をした場合、請求された方は、「婚姻関係が破綻しているのだから、私には慰謝料を支払う義務はない」と言って、拒絶するのです。

婚姻関係の破綻とは何か?

では、婚姻関係が破綻しているとは、具体的にはどういう状態のことを指すのでしょうか。

典型的なものは、長期間別居状態にあるケースです。2年程度別居していれば、婚姻関係が破綻しているものとして、裁判での離婚も認められる可能性があります。

しかし、別居をしていない場合、夫婦関係がどのような状態であるのか、外部からはわからないことがほとんどです。ですから、浮気相手が婚姻関係の破綻を主張してきた場合には、通常であれば、「別居もしていないし夫婦関係は円満だ」と反論すれば良いということになります。

妻が浮気をした場合はややこしい?

しかし、困ったことに、私の経験上ですが、妻が浮気をしたケースでは、婚姻関係の破綻にまでは至ってないにしても、夫婦関係が悪化していることがよくあります。そして妻は浮気相手に、夫婦関係がどれほど悪化しているかを、こと細かに告げていたりするのです。

証拠として、LINEでの夫婦げんかの際のやりとりが提出されたこともありますし、妻の友人が書いた、離婚の相談を受けていたという内容の陳述書が出されたこともあります。

そうなると請求する側としては、それらの証拠について反論しなければならず、破綻していないことを立証する必要が出てきます。

具体的には、妻が食事を作ってくれているとか、最近一緒に出かけたとか、離婚について協議をしたことなどないとかです。

しかしこれらのことを立証するのは、明確な証拠がないため、骨が折れます。

現在の実務上の取り扱い

裁判所は、婚姻関係が破綻しているというのは、関係の修復が不可能な状態だとしていますので、これが認められるには、もう完全に夫婦関係が終了している、まるで赤の他人のような状態にまでなっている必要がありそうです。

そう考えると、婚姻関係が破綻しているという主張は、容易に認められるものではないと言えるのですが、慰謝料請求の障害となるものであることは確かです。

特に妻が浮気をした場合には、慰謝料請求の道のりは険しいものとなる可能性があることを、世の男性方は肝に銘じておいてください。

浮気・不倫の慰謝料額の算定

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慰謝料請求の相談の際、最も多い質問の1つが、「今回のケースだと慰謝料はいくらぐらいか?」というものです。

正直、これは非常に悩ましい質問です。

このブログをご覧になっている方の多くは、既に「不倫 慰謝料 相場」といったキーワードで検索をされたことがあるのではないでしょうか。

インターネットで調べてみると、慰謝料の相場として示されている金額は、おおよそ100万円から300万円程度というところでしょう。ただ、どのサイトも、結論としてはケースバイケースということで締めくくっています。

この結論に不満を持たれた方も多いとは思いますが、実際、慰謝料というのは個々のケースで大きく金額が異なってきますので、そう書かざるを得ません。

それでも、判例というものがありますので、「このような場合にはこれぐらい」という感じで、ある程度の見当をつけることはできます。

したがいまして、以下は原則として、裁判になった場合の慰謝料額ということでお話を進めます。なお、請求対象者は浮気相手とします。

慰謝料額を決める要素

慰謝料額を決める要素には様々なものがあります。主に次のようなものです。

浮気が原因で離婚したかどうか

離婚にまで至ったのかどうかということで、金額が大きく変わります。裁判所が最も重視している点です。

下記の記事でも触れましたが、婚姻生活というのは、法的な保護に値するものですので、それを破壊されたということは、非常に大きな損害が発生していると考えるわけです。

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逆に言うと、これ以外の要素が全て揃っていても離婚していなければ、損害は少ないとして、慰謝料額は低く抑えられてしまいます。

婚姻期間は何年ぐらいか

婚姻期間というのは、長ければ長いほど慰謝料は高額になります。なぜなら、婚姻期間が長いほど、それを失ったときのダメージが大きいと裁判所は考えるからです。

他にも、夫婦仲が良かった場合や、まだ子どもが小さい場合などは、そうではない場合に比べて、離婚によって現状の生活を失ったダメージが大きいため、慰謝料が高くなる傾向にあります。

浮気の期間と性交渉の回数はどれぐらいか

これも裁判所はわりと重視していると思います。当然、浮気の期間が短く、肉体関係を持った回数が少ないほど、慰謝料は少なくなります。

実際の裁判では、被告や証人の尋問の際に、裁判官が直接、何回ぐらい肉体関係を持ったかを質問することもあります。

短い期間や少ない回数であれば、魔が差したのだなどと考えられるため、精神的な損害は比較的軽微であるとされるのに対し、逆の場合には、背信性が強く悪質であり、また、結婚という法制度をないがしろにするものとして、慰謝料が高くなる傾向にあります。

浮気相手の悪質性はどうか

具体的には、「肉体関係があったのにそれを認めない」「認めてはいるが謝罪しない」「二度と会わないと約束したのに約束を破った」「そもそも夫婦関係を破壊するつもりで肉体関係を持った」などです。

ただ、この点については、裁判官の見方が分かれるところだと思います。交際期間や婚姻期間、小さい子どもがいるかどうかなど、客観的な事実のみに基づいて判決を出す裁判官もいます。

私が経験した裁判で、浮気相手が不誠実な対応と悪質な行為を繰り返しおり、証拠も十分に揃っていたにもかかわらず、判決では、そのことに全く触れられておらず、当然、慰謝料額にも反映されなかったということがありました。

浮気相手の資力

これは、慰謝料には、制裁的な意味合いが含まれているためだと言われています。何の苦もなく慰謝料を簡単に支払えてしまっては、不法行為を行ったことについて反省をすることもないであろうとして、資力がある人に対しては、慰謝料が高くなる傾向があるようです。

慰謝料額に関する判例

慰謝料額を決める要素について簡単に説明をしてきましたが、今度は、それらの要素がどのように実際の裁判に影響を与えたのか、いくつかの判例を見てみたいと思います。

慰謝料が低額に抑えられた判例1

まず最初は、低額の慰謝料しか認められなかった判例です。

事案の概要

妻から夫の浮気相手の女性に対する請求

請求額 500万円 → 認容額 50万円

(認容額とは判決で認められた額です)

■浮気相手は夫の部下

■交際期間8か月、不貞行為10回以上

■相手女性は謝罪し自主退職

■夫婦関係は修復

判決のポイント

交際期間は短くはないが離婚にまで至っていない、また、職場での上限関係から、夫が主導権を持っていたことが明らかであり、女性が退職して社会的制裁を受けていることなどから、高額の請求が認められませんでした。

慰謝料が低額に抑えられた判例2

次も、事案のわりに慰謝料が低額になった判例です。

事案の概要

夫から妻の浮気相手の男性に対する請求

請求額 947万円(147万円) → 認容額 110万円(10万円)

※( )内の金額は、弁護士費用として請求した額と認容された額です。つまり、慰謝料として800万円+弁護士費用として147万円を請求し、慰謝料として100万円+弁護士費用として10万円が認められたということです。

■交際期間は3年で同棲もしている

■婚姻関係は破綻

■婚姻当初から夫婦関係は良くなかった

■浮気相手は謝罪を拒否

判決のポイント

交際期間が長く同棲もしており、浮気相手は謝罪をせず、婚姻関係も破綻したということで、高額の慰謝料が認められる要素はあります。しかし、夫婦関係があまり良くなかったなどの事情があり、慰謝料が低く抑えられました。

相場程度の慰謝料が認められた判例

今度は、一般的に相場と言われている程度の慰謝料が認められた判例です。

事案の概要

妻から夫の浮気相手の女性に対する請求

請求額 2200万円(200万円) → 認容額 220万円(20万円)

※( )内は上記と同様、弁護士費用として請求した額と認容された額です。

■婚姻期間約40年

■交際期間約30年

■浮気相手は夫の再婚相手として振る舞っていた

■裁判で離婚

判決のポイント

離婚に至った事案の相場は200万円から300万円程度と言われていますので、その範囲内で認められた、妥当な判決だと言えます。

高額の慰謝料が認められた判例

最後に、相場以上の高額の慰謝料が認められた判例です。

事案の概要

夫から妻の浮気相手の男性に対する請求

請求額 500万円 → 認容額 500万円

■妻と浮気相手は同棲

■交際期間は2年

■妻は浮気相手のために600万円以上借金をし、夫が返済していた

■妻の浮気が原因で離婚

判決のポイント

交際期間が長く同性もしていた上に、浮気が原因で離婚にまで至っているのは慰謝料額が高くなる要素です。ただ、おそらくそれだけでは、ここまでの金額にはならなかったと思います。本件の場合には、夫が高額の借金を肩代わりしたという事情があるため、大幅に上限を超えた金額が認められたのでしょう。

 

上記以外の判例を見ても、離婚にまで至っていない場合には、100万円ぐらいが上限で、離婚している場合でも、相当いろいろな増額要素がからんでこないと、300万円には届かないというところでしょうか。 結局、ネット上によくあるありきたりな記事と同じ内容になってしまいました。

浮気・不倫の慰謝料請求に必要な証拠

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下記の記事でも触れましたが、証拠は非常に重要です。

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そんなことは十分にわかっている、そうお考えの方も多いと思いますし、私自身、どのような事件でも証拠が重要だということはわかっているつもりでした。

しかし、実際に裁判などをするようになって、その認識はまだまだ甘かったと痛感しました。

裁判では、ある程度決定的な証拠がないと、裁判官に請求を認めてもらうことは非常に困難です。全体的な状況からは、どう考えても肉体関係があるとしか思えないという場合でも、それを明確に示す証拠がない限りは勝てません。

では、どのような証拠が必要か、以下にまとめてみました。

 

 

自分で集められる証拠

メールやLINEの記録

有効な証拠として、最も容易に入手できるのがメールやLINEなどの記録です。

ただし、肉体関係があったことがわかるような内容でなくてはいけません。単に「この前の食事は美味しかったね」「また一緒に遊びに行こう」といったデートをしたことを推測させるような内容や、「好き」「愛してる」など恋愛感情があることがわかるだけの内容ではダメなのです。

写真・動画・音声

メールなどに加えて実務上よくある証拠としては、携帯電話に保存された写真です。

もちろん、性行為中のものであれば完璧ですが、そうではなくても、ホテルのベッドの上での2ショット写真など、肉体関係があることがうかがえるようなものでもかまいません。

意外と、ホテルの室内で撮影された動画や録音された音声なども、実務的にはよくあります。私の経験でも、夫のスマホの中には、そういった証拠が残されていたことが何度もありました。

手紙・グリーティングカード

おそらく、LINEなどのやり取りの次に多いのが、手紙やグリーティングカードの類だと思います。

メールやLINEと同様、肉体関係があったことがわかる内容であることが必要ですが、もしそういった記載がないとしても、証拠として価値がないわけではありません。

単独では証拠力としては弱くても、親密性を明らかにする物証の1つとして、他の証拠と組み合わせて力を発揮することもあります。

不貞行為自認書

配偶者が浮気を認めている場合には、そのことを書面にして署名・捺印してもらったものも有効です。

この書面には、浮気相手を特定する情報(住所・氏名)、交際期間、不貞行為の回数、浮気相手が不貞であると知っていた事実など、具体的に記載してあるほうが望ましいです。

スマートホンの位置情報アプリや小型PGSによる追跡記録

「アイフォンを探す」などの、スマートホンの位置情報アプリを使って取得したデータも、裁判の証拠として使用したことがあります。ホテル街に長時間滞在したことを証明するためですが、なかなか有効な証拠だと思います。

ただ、最近は探索対象のスマートホンに通知されるようになったので、残念ながら浮気調査には使いにくくなったとか…。

もちろん、近年一般化してきた小型GPSを使用しての追跡記録も、上記同様の証拠となります。

ラブホテルの領収書・ポイントカード

また、配偶者に対する慰謝料請求の場合限定ですが、ラブホテルの領収書やポイントカードは十分な証拠になります。

配偶者がラブホテルの領収書を持っていても、それでは浮気相手を特定できないため、浮気相手に対する慰謝料請求では効果はありません。

 

ただし、最初に述べたとおり、上記の中でも、明確に性交渉があったということが明らかでないものについては、それ単独では証拠としては不十分ですので、他の証拠と組み合わせて使うことになります。

 

探偵による調査資料

私は以前、ある探偵社と一緒に仕事をしていましたので、浮気の慰謝料請求をしたいという方を、何人も紹介してもらいました。

この場合は、当然、その探偵社が調査した資料があるわけです。

資料というのは、尾行や張り込みをして密会現場をとらえた写真や、ラブホテルに出入りする写真などを、時系列で並べた報告書と、その時の動画が記録されたDVDなどです。

こういった、探偵社が調査をして作成した資料は、決定的な証拠となり得ます。

ちなみに、ラブホテルに入った瞬間の写真があっても、実際に肉体関係があったかどうかは、当事者でなければわかりません。私が依頼を受けた案件でも、「体調が悪くなったからホテルに入っただけ」といった、昔から使い古された反論をされたこともあります。

しかし、ラブホテルというのは、一般的には性交渉を行う場所と認識されていますので、そこへ入ったということは、性交渉があっただろうという事実上の推定が働きます。単に体調が悪くなったという反論だけでは、この推定は覆せないのです。

ですから、ラブホテルに入るところがわかる写真や動画があれば、浮気の証拠としては有効ですし、それが複数回確認されていれば言うことはありません。

詳しくは、私が実際に体験した裁判の記事をご覧ください。

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繰り返しますが、証拠は非常に重要です。

自分で証拠を収集できるのか、探偵などに依頼して調査をしてもらうのか、十分に検討してください。

今は、探偵社の中には、チャットやLINEで無料相談を実施しているところもあり、敷居は随分と低くなっていますので、そういったシステムを利用されるのも良いと思います。

浮気・不倫慰謝料請求の具体的な手続

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浮気(不倫)の慰謝料請求をする場合、まず何から手をつけるべきか。 「さあ、請求してやるぞ!」と意気込んではみたもの、具体的には何をすれば良いのか迷うかもしれません。

そんなときには是非参考にしてください。

浮気・不倫の慰謝料請求のために最初にすること

まずは、自分が今どの位置にいるかを確認してください。それによって何をすべきかがわかります。

夫や妻が浮気をしているのではないかと疑いを抱いている

慰謝料請求における出だしの部分です。まだ何も判明していないが、漠然とした不安がある、あるいは、些細な違和感や不自然な物を見つけたなど。

おそらく、このタイミングで慰謝料を請求しようと考える人は少ないと思いますが、「もし本当に浮気をしていたら…」という程度のことは頭をよぎるかもしれません。

いずれにしても、何もわからない状態なのですから、まずは事実関係を明らかにする必要があります。もう少し配偶者の行動を注意するとか、思い切って探偵に依頼するとかです。

夫や妻が浮気をしていると確信している

単なる疑惑から、一歩進んだ状態です。もはや確信しているわけですから、積極的な行動に移りたいところでしょう。

事案によっては、このタイミングで一気に請求を行うという方法もあるでしょう。

ただし、相手が事実を認めなければ、そこから先には進めません。浮気をしていることはわかっているのだ!といくら強硬に主張してみても、相手は否定し続けるだけで効果はありません。

また、証拠はないが、とりあえず慰謝料請求をしてみて、否定されたら証拠を集めることにしようという考えは絶対にやめるべきです。一度、こちらが浮気を疑っていることを知られてしまうと、当然、浮気の当事者は警戒するでしょうし、関係を解消するかもしれません。

配偶者が浮気をやめれば十分と考えているのであればそれでもかまいませんが、慰謝料を請求するというのであれば、まずは証拠を集めることを一番に考え、十分な証拠が揃うまでは、不用意に慰謝料を請求するべきではありません。

慰謝料を請求するという観点からすると、例え確信があったとしても、客観的な証拠によって何かが明らかになったわけではありませんので、あなた自身の心証を別にすれば、疑惑を抱いている状態と同じとも言えます。

まず優先すべきは、証拠を集めることです。自分で調べてもかまいませんし、探偵に依頼するのも良いでしょう。

夫や妻には気付かれないように、感情を抑え、淡々と行動するのです。

有無を言わさぬ証拠を集めようとしている

上記からはさらに進んだ状態です。証拠を集めるという判断は正しい選択ですので、速やかに実行に移すべきです。

では、証拠とはどういうものか。一体何があれば十分な証拠と言えるのか。

これについては、下記の記事で詳しく説明しています。

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自分で手に入れられるものとしては、配偶者の携帯電話に残っているメール・LINEなどの記録や写真・動画、ホテルの領収書などです。

何度も繰り返しますが、一緒に2人でお酒を飲みに行った、休日にあなたに嘘をついてデートをしていた、といったことがわかる程度のLINEや写真だけでは不足です。

肉体関係があったことがわかるものを集めてください。

証拠はそろっており実際に請求しようとしている

個々の事情によって最善の請求方法は違ってくるわけですが、通常は、慰謝料請求を行う旨を記載した書面を、対象者に郵送する方法が有効です。

弁護士や司法書士などの代理人から請求する場合にも、直接電話をすることもありますが、普通は書面で請求することがほとんどではないかと思います。

電話では、内容が正確に伝わらない可能性がありますし、相手が話を聞いてくれないこともあります。後のトラブルを防止するためにも、しっかりと記録を残しておくことが大事だという点からも、電話より書面の方が良いでしょう。

そこで問題は、どのような内容の書面を作成するかです。 必ず記載しなければならない項目としては、「書面を送付した趣旨」、「金銭を請求する理由」、「請求額と期限・支払方法」といったものです。

具体的な記載内容については、次の記事を参考にしてください。

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書面が完成したら、次はそれを送付するわけですが、このような場合、内容証明郵便を利用することがよくあります。

内容証明郵便とは、読んで字の如く、郵便局がそこに書かれた内容を証明してくれるものです。後に裁判などになった場合、何がそこに書かれていたかが重要になることがありますので、その証拠を予め作っておく必要がある時に利用します。

また、普通郵便や簡易書留に比べると、あまり一般的ではなく、普通に暮らしている分には目にすることもほとんどありませんので、相手を動揺させるとともに、こちらがいかに本気で請求しているかということを見せる役目も果たします。

ただし、簡易書留と同様、相手が一定の期間内に受け取らない場合には、差出人に返送されてしまいますので、目的が達せられないこともあります。

慰謝料請求はもう行っていて相手からの対応を待っている

相手から返事が来るのを待っているわけですから、この段階ではこちらからは何もする必要はありません。それはそれでかまわないのですが、一体、いつまで待ちますか?

慰謝料請求をした書面には、通常、いついつまでに支払ってくださいという期限をつけますが、それが守られるとは限りません。積極的に支払に応じてくれる相手ならば、きちんと期限内に連絡をくれることもありますが、支払に消極的な相手の場合には、全く連絡がないこともよくあります。

もし連絡がなかった場合、次はどうするかという点を考えておかなければなりません。

もう一度書面を郵送するのか、電話番号がわかるなら電話をしてみるのか、あるいは、すぐにでも訴訟の手続をとるのか。

時間はあっという間に過ぎてしまいます。弁護士などに依頼して訴訟をするつもりならば、この段階で探し始めるのが良いでしょう。

既に相手から慰謝料を支払わない旨の回答があった

慰謝料を支払わない旨の回答は、慰謝料請求の最初の段階における1つの結果だと言えます。

慰謝料請求には、3つの段階があります。

1つ目は、互いが直接、あるいは代理人を通じて、慰謝料請求の交渉を行う段階。

2つ目は、場所を裁判所に移して、訴訟等で争う段階。

そして3つ目は、訴訟の結果が出た後、実際に金銭を回収する段階です。

第1段階で、慰謝料を支払わないという結果が出た場合、では次はどうするのか。第2段階へ移行するのか、それとも請求を諦めるのか。

実はこの請求を諦めるというのも、時には有益な決断となることもあります。

なぜなら、訴訟を行うには、費用がかかるのは当然ですが、時間も相当程度要します。そして訴訟が行われている間は、この問題はずっと、あなたの頭の中や心の中に居座り続け、日々ストレスに悩まされることにもなりかねないからです。

訴訟を行った方は、みなさん一様に、1日も早く終わって欲しいと口にされます。訴訟をする場合には、それほど精神的負担が大きいのだということを、予め覚悟する必要があると思います。

いずれにしても、早期解決のため、次の方針は早く決定するべきです。

慰謝料請求における証拠の重要性を認識する

今更ですが証拠は、非常に重要です。浮気の当事者は、浮気をしたことについて、こちらが思った以上に否定してきます。

その傾向は、配偶者よりも、浮気相手の方に強くあります。

逆に、浮気相手の立場からすると、証拠がない限りは否定するのが正解と言えます。配偶者の場合、ほとんどばれているのに否定をすると、その後の夫婦関係が悪化することを避けるためか、ある程度の段階で認めることがよくあります。

しかし、浮気相手にそんな事情はありませんから、強硬に否定し続けますし、証拠がなければ逃げ切ることも可能です。

浮気相手を許せないと思う気持ちが強いのなら、冷静になって、どうあがいても言い逃れできないような証拠を集める必要があるということです。

もう一度繰り返しますが、証拠がないのなら、まずは証拠を集めることに専念すべきです。

浮気・不倫の慰謝料請求とは

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今回のテーマはちょっと法律的な話です。

浮気(不倫)によるものかそうでないかは置いておいて、そもそも慰謝料とは何なのかという点について簡単にご説明します。

慰謝料の法律的な説明

慰謝料とは、損害賠償の一種で、特に精神的な損害に対して支払われる金銭のことを言います。法律的には「第三者の不法行為によって生じた精神的な損害を慰謝するための賠償金」ということになります。

つまりこの場合は、「浮気=不法行為」ということです。 民法は、不法行為による損害賠償について次のように規定しています。

民放709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

これを例えば、妻A子が、夫B太郎の浮気相手の女性であるC美に慰謝料請求をするという場面にあてはめて考えてみます。

故意又は過失

まず、「故意又は過失」というのは、C美は、B太郎が結婚していることを知りながら、不倫関係になったのかどうかということです。

C美が知っていたのなら「故意」があったということになりますし、結婚していることに気付いて当然なのに気付かなかった、ということであれば、「過失」があったと言えます。

他人の権利又は法律上保護される利益

次に、「他人の権利又は法律上保護される利益」とは、最高裁の判例によると、「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」となります。これが侵害されたということは、平たく言うと、「平和な結婚生活をぶち壊された」ということです。

ここでの「法的保護に値する利益」とは、「この利益が害された場合には、裁判所が損害賠償請求のお手伝いをしますよ」という意味です。

侵害した

「侵害した」とは、不法な行為が行われたということであり、肉体関係があったという事実を意味します。

これによって生じた損害

また、「これによって生じた損害」というのは、浮気によってA子が被った損害、例えば、ものすごい精神的なダメージを受けて非常に辛い思いをしたという場合、そのこと自体が損害となるわけです。

そして、民法には、精神的な損害についても賠償する必要があると規定した、次のような条文があります。

民法710条

民法710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

物理的・経済的な損害

ところで、浮気による損害としては、精神的損害だけではなく、物理的な損害もあり得ます。

先ほどの事例ですと、B太郎の浮気が発覚したことによりA子が大きなショックを受けて不眠症になることもあり得ます。

その場合、A子が心療内科で診察を受けて薬を処方してもらったとすると、その医療費も浮気による損害だと言えますので、A子が支払った医療費分についても、C美に対して損害賠償請求をすることが可能です。

浮気・不倫の慰謝料請求に必要な条件

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夫または妻が浮気をしたからといって、必ずしも慰謝料を請求できるわけではなく、慰謝料請求するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。

 

 

浮気をした配偶者に慰謝料を請求する条件

浮気をした配偶者である夫または妻に対して、慰謝料を請求する場合には、次の2つの条件が必要です。

浮気をした配偶者と浮気相手の間に、肉体関係があること

法的には不貞関係と言います。単に配偶者が異性とデートをしたとか、食事をした、手をつないだ、腕を組んだというだけではダメです。

キスをしていてもダメです。例えそこに恋愛感情があったとしてもです。

性交渉を行っていなければいけません。

婚姻関係が破綻していないこと

浮気をした配偶者が浮気相手と性交渉を行った時に、既に婚姻関係が破綻していたという場合には、慰謝料請求はできません。互いに夫婦としての実情はなく、単に戸籍上だけの関係というようなケースです。

ただ、この婚姻関係の破綻というのが非常に悩ましい問題で、実務的にも、慰謝料請求の際の大きな壁になることが多々あります。

この点については、下記の記事で詳しく説明しています。

furinisharyou.hatenablog.com

浮気相手に対して慰謝料を請求する条件

上記2つの条件が揃っている場合には、浮気をした配偶者に対して慰謝料を請求できるのですが、浮気相手に対して慰謝料を請求するためには、もう1つ3番目の条件が必要になります。

浮気をした配偶者が既婚者であることを、浮気相手が知っていること

浮気をした配偶者のことを独身だと信じ、浮気相手は恋人同士だと思って交際していたような場合には、肉体関係があったとしても慰謝料請求はできません。

このケースでは、おそらく浮気をした配偶者が浮気相手に対して、自分は独身であるなどと嘘をついてだましていたと考えられるからです。

ただし、独身だと嘘をつかれていたのだとしても、次のような状況があればアウトです。

デートは月に1回でいつも会社終わりの平日の夜だけ

友達や家族に紹介してくれない

デート中かかってきた電話に出ない

左手の薬指に指輪の跡がついているような気がする

これらはいずれも、通常であれば結婚しているのではないかと疑っても不思議ではない行動や状況です。それに気付かず独身だと信じていたような場合には、浮気相手に過失があるとして、慰謝料請求が可能になります。

この点についても、なかなか難しい問題を含んでいますので、詳細は次の記事をご覧ください。

furinisharyou.hatenablog.com

条件を満たしていなくても請求は可能

お断りしておきますが、以上の条件は、あくまでも慰謝料請求をする上で、法的に必要となる条件(裁判を起こして請求する場合の条件と言い換えても良いかもしれません)です。

どういうことかと言うと、例えば「肉体関係があること」という条件を満たさなかったとしても、夫が部下である若くてかわいい女性と2人でディナーに行ったことが発覚した場合には、妻は夫に対して謝罪を求め、高級ブランドのバッグを買ってくれと要求することはできるわけです。

これは一種の慰謝料です。不貞の条件を満たしていない以上、夫にはこの要求に応じる法的義務はありませんが、夫が妻の機嫌をとるため、自主的に応じる可能性は十分にあるだろうということです。

ですから、条件を満たしていないからといって諦めず、ダメもとで請求してみるのも良いと思います。