未払の養育費、絶対回収したる! 給料差押え・理論編
養育費の支払率は20%
平成23年という少し古いデータですが、厚生労働省の調査によると、母子家庭について、現在も養育費が支払われている割合は19.7%、過去に支払われたことがある割合は15.8%で、全く支払われたことがない割合は、なんと60%以上にも及んでいます。
そもそも、離婚するときに、養育費の取り決めすらしていないというケースが60%以上ありますので、払われていない家庭が多いのもある意味当然ということなのでしょうか。
しかし養育費の請求というのは法律上も認められている権利ですから、別れた旦那が支払ってくれないからと、泣き寝入りすることはありません。
そこで、今回は、離婚の時に公正証書や調停調書で養育費の取り決めをしたにもかかわらず、旦那が養育費を支払わないという場合に、どうやって支払わせるか、その方法についてお話をします。
離婚時に養育費の取り決めをしなかった、あるいは取り決めはしたが、公正証書や調停調書などの書類は作らなかったとしても、諦める必要はありません。こういったケースについては、改めて説明することにします。
給料の差押えがベスト
公正証書や調停調書がある場合には、強制執行という手続をすることが可能です。いわゆる差押えというやつです。
差押えには、不動産の差押え、自動車の差押え、銀行預金の差押えなど、差押えの対象によっていろいろ種類がありますが、中でも、最も容易で効果的な方法は、給料の差押えです。
具体的な方法については、ネットを検索してもらえればいくらでも出てきますので、それは省略するとして、ここでは給料の差押えの特徴について解説します。
給料差押えのシステム
給料の差押えをするときは、裁判所を通じて、債務者と第三債務者に通知が行きます。
例えば、あなたが元旦那の給料を差押える場合には、裁判所は、元旦那に対して、給料差押えの申立があったことを知らせます。そして元旦那が勤務する会社には、「給料差押えの申立があったから、次の給料日からは、まず一部を元奥さんに支払って、その後で残った分を元旦那に支払うようにしてください」と通知するわけです。
つまり、あなたは養育費を優先的に回収できるということです。
将来の養育費も一度の手続で差押え可能
これが給料の差押え手続最大の特徴です。将来の養育費とは何かと言うと、まだ支払期限が来ていない養育費のことです。来月分とか、再来月分とか。
普通の差押えの場合、当然、支払期限が来ていない分については差押えができません。 例えば、AがBにお金を貸したとして、返済期限が3か月後なのに、「Bはちゃんと返済しそうにないから、今のうちに差押えの手続をしておこう」というのは絶対無理ということです。返済期限がやってきて、実際に返済されなかった場合に、ようやく手続ができるわけです。
ところが、養育費の未払で給料を差し押さえた場合、これまでの未払分に加えて、来月分以降の将来的な養育費についても、給料の差押えの効力は続きます。つまり、一度給料差押えの手続をしてしまえば、翌月以降は、何もしなくても、自動的に給料が差押えられ、養育費を優先的に回収することができるのです。
この制度のおかげで「また養育費が支払われないかも」という心配をしなくてすむわけです。
差押え対象がわかりやすい
債権の差押えというのは実は難しいんです。一番メジャーな債権と言えば、金融機関の預貯金ということになりますが、これを差し押さえる場合には、どの銀行のどの支店に口座があるかを、差し押さえる側で調べなければなりません。裁判所は手伝ってはくれませんし、もちろん銀行も教えてはくれません。
どこかの銀行には絶対口座があるのだければ、どこの銀行のどの支店かがわからないという場合、方法としては、可能性のある銀行の支店全てを対象として、裁判所に差押えの申立をするしかありません。
また、予想があたって、申立をした中に差押えられる口座があったとしても、差押えをしたタイミングが悪く、その口座にお金が入っていなければ、差押えは全く無意味、いわゆる空振りということになります。
その点、対象者の職場を探すことは、そう難しくはありませんし、給料は毎月入ってくるわけですから、空振りということもありません。
問題点
良いことずくめと思われる給料差押えにも、気をつけなくてはいけない点があります。
それは、勤務先に差押えの事実がばれてしまうことにより、対象者が職場に居づらくなって、退職してしまう可能性があるということです。
大手企業や公務員であれば、そういう心配は少ないかもしれませんが、そうでない場合には、退職後そのまま行方をくらましてしまうということも考えられます。
そういった危険を回避するために、対象者に事前に「給料差押えの準備をしているから、それがいやなら養育費を支払ってくれ」と伝えるという方法もあります。
どうするのが良いかは、ケースバイケースだと思いますが、給料の差押えをする場合には、その点を十分に検討する必要があります。
浮気相手が水商売だと慰謝料請求できない!?
今回は慰謝料請求に関する裁判例のお話です。
不倫の慰謝料請求に関する知識を求めて、日々、ネットの情報をどん欲に集めている方なら、この記事のタイトルを見ただけでお察しいただけたかと思いますが、平成26年4月14日、東京地方裁判所で「うそ!?」と一瞬固まってしまいそうな判決が出ました。
東京地判平成26年4月14日枕営業判決
事案の内容と通常の考え方
事案としては簡単な話で、銀座のクラブのママと店の常連客である社長が、7年間も不倫をしていたとして、その社長の妻がママに対して、400万円の慰謝料を払えと訴えたわけです。
言うまでもありませんが、女性が、男性を既婚者だと知りながら肉体関係を持った場合、その男性の妻から慰謝料の請求をされても文句は言えません。以下の超有名な最高裁判所の判例で、はっきりとそう言っています。
夫婦の一方の配偶者Aと肉体関係を持った第三者Bは、故意または過失がある限り、配偶者Aを誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、AB両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者Cの夫または妻としての権利を侵害することになり、その肉体関係は違法行為となり、他方の配偶者Cの被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務がある。
夫を誘惑したとかしてないとか、恋愛感情があったとかなかったとか、そんなことは関係なくて、やったんなら慰謝料払えよ!ってことです。
枕営業判決の簡単な解説
ところが、東京地裁の判例は、次のような理論構成によって、慰謝料を支払う必要はないと言い切っています。
社長はすごい上客なわけで、ママが社長と寝たのは、社長に、今後もどんどんお店にお金を落としてもらいたいから。要するに枕営業ってわけ。
上の最高裁の判例は確かにそうなんだけど、それは普通の人の話で、ソープ嬢みたいな売春婦が客と関係を持ったとしても、それは商売として、客の性欲を処理しただけだから。客の夫婦関係には全然影響はないし、それで客の嫁が精神的苦痛だなんだと言ったところで、ソープ嬢には慰謝料を払う義務なんてないよ。
クラブのママやホステスが枕営業やってるのは当然で、みんな知ってることじゃない? だから、ママの枕営業もソープ嬢と同じってことで、嫁に慰謝料払う必要なんてないんだよね。
と、まあ、ものすごい怒られそうですけど、わかりやすく解説するとそういうことです。
どこから手をつけていいかわからないぐらいに、言いたいことや疑問は次々にわいてきますが、私が一番ひっかかったのは、ソープ嬢=売春婦だと明言した上で、クラブのママも同じ仲間に入れてしまったという点です。
売春婦と言われたソープランド勤務の女性も相当不愉快な思いをされていると思いますが、当事者のママはどう感じたのでしょう。
また、今の時代に「売春婦」という言葉のチョイスも違和感を覚えずにはいられません。
この裁判は、全面的に敗訴した原告が控訴しなかったため、第一審で確定しましたが、もし控訴していれば、判決が覆った可能性があるというのがおおかたの見方で、さすがにこれが先例となって、枕営業の場合には慰謝料請求を認めないといった流れになることは考えにくいようです。
ネット上には、この判決について詳しく解説している記事がたくさんありますので、興味のある方は調べてみてください。
実務への影響
それにしても奇妙な判決が出たもんだなーなどと、対岸の火事のようにぼんやり思っていたら、つい最近、私の頭上からも火の粉が降ってきました。
夫の浮気相手であるキャバクラ嬢に慰謝料請求をしていた裁判で、被告の弁護士から、この判決が証拠として提出されたのです。
一瞬絶句しましたが、法律で仕事をしている業界の中でも、末端的存在の私にまで影響があるのだなと、判決のインパクトの強さを改めて感じました。
イチロクの小型GPSが浮気調査に使える!
小型のGPSを利用して浮気調査を行うという方法があります。
慰謝料請求の証拠を集める際、探偵・興信所を利用するのは非常に有効です。しかし、いかんせん料金が高額であることは否定できません。経験豊富な調査員や最新の機材を投入するわけですから、それもやむを得ないというところでしょう。
探偵に依頼するだけの費用を用意するのも難しいという場合、あるいは、浮気しているかどうかはっきりしないので、今のところはあまり費用をかけたくないという場合には、結局自分で証拠を集めるしかありません。
そんな時に浮気調査を強力にサポートしてくれるのが、GPSです。中でもイチロクがレンタルしているGPSが優秀だということなので、早速調べてみました。
GPSによる浮気調査
GPSによる調査というのは、具体的には、対象者が乗車した車などにGPSを取り付け、対象者がどの道を通ってどこに寄り道をして、最終的にはどこへ行ったのかを調べます。そしてその行動を逐一記録したものが、証拠となります。
ただ、GPSの位置情報から対象者がラブホテル街にいることが判明したとしても、それだけで浮気の証拠として、裁判に勝てるわけではありません。極めて怪しいですが、決定的とまでは言えません。
しかし、LINEの記録や浮気相手との2ショット写真など、その他の状況証拠があれば、合わせ技として浮気の認定がなされることもありますし、頻繁にラブホテル街に行っていることがわかれば、不貞回数が多いということで、慰謝料の金額が増額されることもあります。
GPSによる位置情報は、なかなか優秀な証拠であると言えます。
イチロクのGPSは3種類
では、イチロクがレンタルを行っているGPSの詳細を見ていきましょう。
まず、肝心のGPSですが、「お手軽GPS」「Pro-GPS」「Pro-GPS+」の3機種があります。GPSには、受信機能しかついていないものと、受信機能と発信機能がついているものがありますが、イチロクがレンタルしている機種は全て発信機能がついている、リアルタイムGPS発信機と言われるものです。
発信機能の有無によって何が違うかと言うと、発信機能のないものは、受信した情報をリアルタイムで発信できないため、調査終了後に受信記録をパソコンなどで閲覧し、そこでようやく調査対象者の行動が明らかになります。一方、発信機能が付いているGPSは、受信した情報を速やかに任意のパソコンやスマホに発信しますので、調査をする方は、リアルタイムで調査対象者の位置を確認することができるわけです。
では、イチロクがレンタルする3種類のGPSにはどういった違いがあるのかという点ですが、公式サイトにはそれぞれの機種を比較した下記のような表があります。
浮気調査にはPro-GPS
これを見ると、「お手軽GPS」は、「精度」と「住所表記」の項目で劣っているのが目に付きます。実際、公式サイトによると、「お手軽GPS」は「Pro-GPS」に比べて、小型・軽量ではあるものの、低価格である分、位置情報の精度やバッテリー性能、機能性で劣っているため、浮気調査など、より正確な調査が必要な場合には、「Pro-GPS」の利用を薦めると記載されています。
ちなみにレンタル価格は、「お手軽GPS」が30日で16000円、「Pro-GPS」が30日で33800円、「Pro-GPS+」が30日で39800円です(「Pro-GPS」と「Pro-GPS+」はサービスで5日プラスされます)。
確かに「お手軽GPS」の価格は魅力的ですが、浮気の慰謝料請求をするための証拠集めという趣旨からすると、GPSの精度は非常に重要な部分です。
「Pro-GPS」は、屋外であれば、誤差はわずか10m以内という高精度であり、ここは低価格という誘惑を退け、「Pro-GPS」を選択するべきでしょう。
また、浮気調査においては、浮気相手の住所をつきとめる必要がありますので、住所表記が何番地何号かまで、詳細に表示されると言うのも、非常に重要ですので、この点からも「Pro-GPS」が浮気調査に向いていると言えます。
Pro-GPSとPro-GPS+の違い
では、「Pro-GPS」と「Pro-GPS+」との差は何かというと、これは自動検索機能がついているか否かです。この自動検索機能というのが、実は結構重要です。
発信機能がついているリアルタイムGPSと、受信機能しかついていないGPSのお話をしましたが、受信機能しかついていないGPSの場合、その性質上、一定間隔で受信した情報は自動的に記録されます。しかし、発信機能がついているリアルタイムGPSは、位置情報を自動的に記録するわけではなく、手動で検索をした場合にのみ記録されます。
したがって、自動検索機能がついていないリアルタイムGPSだと、調査をしている間、一定間隔でパソコンやスマホを操作して位置情報を検索する必要があります。万が一、急な用事などで検索できなくなった場合には、何の履歴も残りません。この点、自動検索機能がついているGPSであれば、何の操作をしなくても、自動的に位置情報を記録してくれます。
浮気調査は失敗は許されませんし、何度も証拠を取るチャンスがあるとは思えません。それであればこそ、浮気調査には、精度が高く、自動検索機能がついた「Pro-GPS+」を利用すべきだと考えます。
Pro-GPS+のレンタル料金
「Pro-GPS+」のレンタル料金は、現在、キャンペーンを実施中ということで、30日+5日で、通常価格5万9800円のところ、2万円OFFの3万9800円となっています。
「Pro-GPS」のレンタル料金が、30日+5日で、通常価格4万3800円から1万円値引きで3万3800円で、「Pro-GPS+」と6000円しか差がありませんので、私としては、やはり「Pro-GPS+」を推したいと思います。
また、イチロクは往復の送料、代引手数料、保証金も全て無料ということで、レンタル料以外の費用は必要ありません。
さらに、最短で翌日の午前中に配達してくれるので、急に調査の必要が生じた場合にも対応可能です。
配偶者が浮気をしているのではないかと思ったものの、これといった証拠もないとき、探偵に調査を依頼するかどうか悩んでいるのならば、GPSを利用して自分で調べてみるというのも、1つの方法だと思います。
浮気相手から逆にお金を請求される!?共同不法行為と求償権の話
浮気相手から慰謝料をふんだくってやったのに、今度はこっちが請求されることになるなんて、あり得なさそうで、実は十分あり得る話なんです。
浮気・不倫は共同不法行為
慰謝料請求する場合の浮気・不倫は、法的には不法行為ということになります。そして、浮気・不倫は1人ではできず、通常は男女1名ずつが共同して行うものですので、不法行為の中でも特に共同不法行為と呼ばれています。
したがって、慰謝料請求をする場合には、対象者を、「浮気をした配偶者」「浮気相手」「浮気をした配偶者及び浮気相手」の3つから選ぶことができます。
最も多いのは、浮気相手に対する請求でしょう。
離婚をしない場合には、夫婦が家計を完全に別にしているなどの特殊なケースでない限り、配偶者への請求は、家の中でお金が回っているだけであまり意味がないからです。
慰謝料を支払うと発生する求償権とは
さて、あなたは、弁護士などには相談せず、自分自身で夫の浮気相手である女性への慰謝料請求を行い、無事100万円が支払われたとしましょう。
自分で全て行ったので、金銭的な負担はありませんでしたが、やはり慣れないことですので、精神的な疲労は相当なものだったはずです。ほっと一息つきたいところでしょう。
しかし、事件はまだ解決していないかもしれません。なぜかと言うと、求償権というものが存在するからです。
え?求償権って何?
求償権とは、債務者(お金を支払う義務がある人)に代わって債権者(お金を請求する権利がある人)にお金を支払った人が、債務者に対して支払った分のお金を請求できる権利です。
借金をした人の代わりに保証人が返済し、今度は保証人が、借金をした人に対して、立て替えたお金を払えというケースがそれです。
それともう1つ、浮気慰謝料請求についての求償権を理解するには、連帯債務というキーワードも重要です。
は?連帯債務ってどういうこと?
連帯債務とは、例えば、住宅ローンを組む時などに利用されます。
お金を貸す銀行が、旦那さん1人の安月給ではちゃんと返済してもらえるか心もとないと考えた場合、共働きの奥さんも加えて、夫婦の連名でなら貸してくれるというようなケースです。
連帯債務の効果としては、返済が滞った場合、銀行は旦那さんに対しても、奥さんに対しても、貸したお金全額の返済を求めることができます。2人いるから、2分の1ずつしか請求できないわけではありません。
銀行にとっては非常に都合がよい制度で、銀行が旦那さんに全額支払えと言った場合、旦那さんは請求されたとおり、全額支払うしかないのです。奥さんと2人で借金したのだから、自分は半分しか支払わないといった抵抗はできません。
求償権とは債務者間で不公平が生じないようにする制度
では、旦那さんが全額支払った場合にどうなるかですが、ここで求償権が登場します。
旦那さんが全額支払ったから、奥さんは何の負担もせずにすんでラッキー、というわけにはいきません。
2人なので、本来は半分ずつ負担すべきであると考えると、旦那さんが負担する必要がなかった半分について、奥さんに対して請求することができるのです。
で、この話が浮気の慰謝料請求とどう関係があるのかですが、さきほどの例で言うと、共同不法行為を行った者、すなわち、夫と浮気相手の女性は、あなたという債権者に対して、連帯債務を負担したことになります。
すなわち、あなたは上記の銀行と同様、夫と相手女性のどちらに対しても慰謝料全額を請求できるのです。そして、相手女性が1人でその全額を支払ったということは、相手女性は、もう1人の債務者であるあなたの夫に対して、半額の50万円(便宜上半額としておきましたが、内部的な負担の割合は、各事案によって異なります)を請求する権利を持つということになります。
あなたが既に離婚している、あるいは別居しているなど、夫とは家計が同一でない場合には問題ありません。しかし、そうでないのならば、浮気相手の女性に100万円を支払わせたとしても、半分の50万円は取り返される可能性があるわけです。
実務上の問題
求償権は、なかなか難しい話ですが、実務上問題になることも多いので、慰謝料請求の際には、注意しなければいけない点です。
慰謝料は、どちらか一方に対して全額請求することもできますし、一部だけ請求することもできます。慰謝料総額が200万円だと思えば、双方に100万円ずつ請求することもできます。
浮気相手に全額請求してもいいわけですが、求償権を行使されてしまうと、旦那がターゲットにされて逆に請求されてしまいます。
それであれば、最初から半額だけの請求にしておいて、求償権を行使しないという和解をするとう選択肢もあるでしょう。
慰謝料を請求する前には、誰に対していくら請求するか、求償権の問題も含めて、よく検討する必要があります。
浮気・不倫の証拠を集める 探偵・興信所に依頼・利用する際の注意点
下記の記事では、慰謝料請求の際に証拠が非常に重要であるとお伝えしました。
そして、証拠の収集方法は大きく分けて2つ。
自分で探し出すか、探偵や興信所などに依頼するかのどちらかになるわけですが、今回は、探偵や興信所に依頼する際に気をつけておきたい点を少しお話をします。
探偵・興信所の問題・トラブル
探偵社のアドバイスが正しいとは限らない
前にも書きましたが、私は以前、ある探偵社と一緒に仕事をしていました。別に怪しい関係ではありません。
探偵社では相談者との面談の際に、浮気の証拠がとれた後の流れを説明することが多いと思います。
つまり、その証拠を使ってどのように相手に請求するとか、交渉の展開によっては裁判になるとか、慰謝料の相場はいくらぐらいとか、今後予想される動きとか、それによって生じるメリットやデメリットとか、さまざまな情報を、相談者に伝えるわけです。
私や知り合いの弁護士は、そういった話をする際に必要となる法的手続に関するアドバイスをしていました。
しかし、探偵社によっては、このような法的なサポートを全くしない、あるいは、調査を依頼してもらうため、「証拠さえあれば高額の慰謝料が取れる」などと、依頼者に故意に誤った情報を伝えるケースも考えられます。
浮気調査と法的な手続とは密接な関係にありますので、今では多くの探偵社が、弁護士などの専門家と提携しているという状況があります。
それにもかかわらず、法律に関係するアドバイスをしてくれないとか、そのアドバイスが適当または怪しいと感じたら、絶対その探偵社に依頼すべきではありません。
探偵社の調査力は、業者によって大きな開きがあることを認識する
これまでいくつもの探偵社の調査資料を精査し、裁判の証拠として利用してきました。
何年もそのような仕事をやってきて感じたのは、各探偵社によって、調査のクオリティには相当な差があるなということです。
尾行によってラブホテルに入った事実を確認できたにもかかわらず、上手く撮影できていなかったため、人物が特定しづらいという資料を見たことがあります。
また、10回近く密会現場をおさえておきながら、浮気相手の名前も住所もつきとめられなかったという報告書を見たこともあります。
調査報告書の作成能力もまちまち
調査自体は問題なく行われたのに、調査資料の作成段階でミスがあったのか、写真と日時が合致しておらず、証拠としての価値が落ちてしまったということもありました。
ページが抜けている報告書もありましたし、尾行調査の報告書に記載されている時間が数時間単位で欠落しており、その間何があったのかが全くわからないという資料もありました。
料金や契約をめぐるトラブル
料金体系が不明瞭であり、追加調査の費用を請求されてトラブルになったという話は何度か聞いたことがあります。また、契約後の解約にかかる解約料金で揉めることも多いようです。
ひどいケースでは、調査自体がほとんど行われていなかったため依頼者が費用の支払を拒んだところ、探偵社から訴えられて裁判になったということもありました。
探偵社・興信所に依頼する際の注意点
探偵社や興信所になじみがある人はほとんどいないでしょうし、実態がどういったものかもはっきりとわからないでしょう。しかし、自分で証拠を集めることができないのであれば、探偵社などに依頼するしかないのです。
探偵社や興信所の調査費用は、決して安いものではありません。また、一度調査に失敗すれば、二度とチャンスはないかもしれません。
探偵社に依頼する時には、必ず無料相談をしてください。そして、検討に検討を重ねて、どの会社へ依頼するのかを慎重に判断してください。
最初に無料相談をした探偵社の担当の人が、すごく感じが良かったとしても、すぐに契約はせず、一旦持ち帰ってじっくりと検討し、できれば他の業者にも相談をしてみることをお薦めします。
浮気・不倫の慰謝料を請求する文書の書き方
浮気・不倫の慰謝料請求は書面で行う
浮気・不倫の慰謝料請求をする場合、自分でいろいろ調べてみたり、知人に相談してみたり、興信所に調査を依頼してみたりと、様々な準備が必要になります。
そして、それらの準備が完了すれば、いよいよ実際に慰謝料の請求を行うという段階に入っていきます。ここまできてようやく、慰謝料請求の本当の意味での始まりと言ってもいいかもしれません。
さて、慰謝料請求を行う場合には、下記の記事でも述べましたが、書面を送付する方法が最善だと思います。
では、その書面の内容はどういったものか、何を書くべきか。この点についてご説明します。
慰謝料請求書のひな形(サンプル)
まず、サンプルとして、普段私が書いているものとほぼ同内容の文章をご覧ください。ただし、代理人ではなく、請求者本人が自分の名前で差し出す場合のものです。
私は、Aの妻として、貴方に対し、次のとおりご通知いたします。
貴方は私の夫であるAが既婚者であることを知りながらAと不貞関係をもちました。貴方とAとが不貞関係にあったことは、興信所の調査によっても明らかとなっています。
貴方とAとの不貞関係により、私たち夫婦の関係は極度に悪化し、離婚にまで至りました。貴方とAが交際をする以前は、私とAは良好な婚姻関係を続けていたのであり、離婚の原因が、貴方とAとの不貞関係であることは明白です。
私は、貴方とAとの不貞関係及び離婚によって、計り知れないほどの精神的損害を被りました。貴方もご承知のとおり、既婚者と不貞行為に及ぶことは、他方配偶者の権利を侵害する重大な不法行為であり、その行為によって損害を受けた者は、賠償請求する権利を有します。したがいまして、私は貴方に対し、慰謝料として200万円を請求いたします。
つきましては、本書面到達後2週間以内に、同額を下記口座に振り込みお支払いください。期間内にお支払いがなく、何らかのご連絡もいただけない場合には、法的手続をとることになりますので、その旨、申し添えます。
なお、私にご連絡いただく際は、口頭でのやり取りによるトラブルを防止するため、書面をご利用ください。
当事者が作成した書面ですと、もう少し詳細な事実関係や、感情的な記述が入ってくる傾向にありますが、専門家が作る書面はだいたいこのような内容で、わりとシンプルなものがほとんどだと思います。
慰謝料請求書には何を記載する必要があるか
慰謝料請求書には、どういった内容を記載すべきであるのか。上記のひな形を例に、具体的に検討します。
慰謝料請求の条件をもらさず記載する
請求する理由を明確にするとともに、「こちらには請求する権利があるんだぞ」ということを理解してもらうためです。
また、この請求書は、いずれ訴訟などになった場合には証拠として提出する可能性もあるため、慰謝料請求するにあたって、法律上必要な要件を備えているのだということを明らかにしておきます。
法律上必要な要件については、下記の記事で詳しく解説しています。
具体的にひな形の中のどの記載がその要件に該当するかは次のとおりです。
証拠があることを記載すべきか否か
証拠に関してですが、証拠があることは最初は隠しておいて、相手が否定をしたタイミングで、つまり嘘をついたのを見計らって提出する方が効果があるのではないかと訊ねられることがあります。
確かに、相手のダメージという点を考えるとそうなのかもしれませんが、証拠があるという事実に変わりはありませんので、私個人的には、最初から証拠があると伝えておいた方が合理的で、相手の感情を逆撫ですることもなく、スムーズに話が進むのではないかと考えています。
したがって、私は証拠があるときには、基本的にはその旨記載するようにしています。
支払の期限を設ける
支払期限は必ず記載します。これがないと、いつまで回答を待てば良いのかがわかりませんし、無駄に時間をかけることになりかねません。では、どの程度の期間を設定するかですが、10日から2週間程度が妥当ではないかと思います。
実際のところ、その期間内にいきなりお金が振り込まれることはありません。相手が良心的である場合には、期間内に連絡が来て、支払時期を改めて決めることになります。
つまり、支払期限とは言うものの、現実的には、連絡を待つ期限だと考えて良いと思います。
書面で連絡するよう求める
書面連絡というのは、合理的な理由としては、証拠を残すため、また、互いの主張を明確にし、勘違いや聞き間違い、言い間違いを避けるためです。
また、双方ともに、できれば直接話をしたくないということも多いと思われますし、感情的なトラブルを防止するという意味でも、書面でやり取りをする方が良いでしょう。
タイトルはどうするか
もう1点、これは細かい話ですが、この書面のタイトルは何とつければ良いのかと、疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。
「請求書」なのか「連絡書」なのか?それともタイトルは不要なのか?
結論を言いますと、タイトルはあってもなくてもどちらでも良いでしょうし、「請求書」でも「連絡書」でも問題ないと思います。
要は、こちらの言いたいことが伝わりさえすれば良いのです。ちなみに私は「通知書」としています。
慰謝料請求書は内容証明郵便で送付すべきか
書面が完成したら、次は送付するわけですが、送付の方法は検討の余地があります。法的な文書の場合には、内容証明郵便を利用することがよくありますが、送付される側の立場になって考えてみると、あまり気分の良いものでないのは確かです。
浮気相手の気分を害しようが、そんなことは知ったことではないという思いもよくわかりますが、慰謝料の回収という点をゴールとするなら、最も回収の可能性が高くなる手段を選択することも必要でしょう。
実際、いきなり内容証明郵便を送付したため、相手が怒って、和解交渉が難航したという話を聞いたことがあります。
また、内容証明郵便の場合には、相手が受け取らないことも想定されますので、あえて普通郵便を利用することも、事案によっては検討の余地があります。
浮気・不倫慰謝料請求の問題点 浮気相手の故意または過失
浮気・不倫慰謝料請求の問題点として、浮気相手の故意または過失というテーマがあります。
おそらくちょっと理解しにくいところだと思いますので、できるだけわかりやすくお話しします。
浮気相手の故意または過失とは
浮気相手に対する慰謝料請求の場合、「肉体関係がある」「婚姻関係が破綻していない」に加えて、「浮気相手に故意または過失がある」ことが必要です。この点は、下記の記事でも触れました。
ここでは、もう少し具体的に解説します。
浮気相手の故意
「故意」というのは、法律的には「自己の行為によって他人の権利を侵害することまたは違法と評価される結果を発生させることを認識しながら、あえてその行為を行う心理状態」です。
つまり、浮気の場合の故意とは、OLが「課長には奥様がいるし、家庭を壊してしまうかもしれない」と理解した上で「でもこの気持ちは止められないの!」と暴走して、課長と不倫関係を結んでしまうことです。
特に、家庭を壊そうという意図がある必要はありません。
家庭が壊れる可能性を理解している、すなわち、課長が結婚しているということを知っていれば、故意になり、慰謝料支払義務が生じますし、知らなければ故意にはならず、慰謝料支払義務は生じません。
浮気相手の過失
では、浮気相手が課長が結婚していることを知らなければ、慰謝料を請求することはできないのかと言うと、そうではありません。
もし浮気相手が課長が既婚者だと知らなくても、知らないことについて「過失」があれば、やはり慰謝料支払義務を負うのです。
「過失」というのは、法律的には「違法な結果が発生することを予見し認識すべきであるにもかかわらず、不注意のためそれを予見せずにある行為を行う心理状態」です。
つまり、浮気の場合の過失とは、OLが「課長は左手の薬指に指輪をしているわ」と思いながらも「でも課長は独身だと言っているから信じているの」と勝手に思いこんで、課長と不倫関係を結んでしまうことです。
いくらOLが課長が独身だと信じていたとしても、普通であれば既婚者だと認識できたのならば、過失があるとして、慰謝料支払義務が発生します。
しかし、実際のところは、浮気相手が「既婚者だとは知らなかった。独身だと思っていた」と主張することは多くありません。
それでも過去に一度だけ、慰謝料請求で訴訟を提起したところ、「独身だと信じていた」と反論された上に、それを補強する証拠をどんどん出されてしまって、やむを得ず取り下げたことがありました。
あの時はまいりました…。
浮気相手からのよくある反論
では、浮気相手はどのように対抗してくるのかと言いますと、「婚姻関係は破綻していると思っていた。だから慰謝料を支払う必要はない」と反論してくるのです。
つまり、「独身」ではなく、「婚姻関係の破綻」を信じていたというわけです。
「婚姻関係の破綻を信じた」という主張
「婚姻関係が破綻していないこと」は、慰謝料請求の条件の1つです。逆に言うと、「婚姻関係が破綻していた」場合には、浮気相手には慰謝料支払い義務は発生しません。
さらに、実際には婚姻関係が破綻していなくても、浮気相手がそう信じており、そう信じたことに過失がなければ、やはり慰謝料を支払う義務は負わないのです。
もちろん、課長が「我が家は婚姻関係が破綻しているから、僕とつきあっても不貞にはならないんだよ」と言ったとしても、それをホイホイと信じて肉体関係を持ってしまっては、「過失」があったと言われても仕方ありません。
しかし、課長が自宅にも帰らず、毎日カプセルホテルに泊まっていたり長期間にわたって妻と別居していたり、あるいは、離婚の準備を進めているとして、妻のサインがされた離婚届を持っていたりというように、明らかに夫婦関係の改善が不可能だと思えるような場合には、婚姻関係が破綻していると信じるのも無理はないかもしれません。
そうなると、過失はなかったとみなされ、不法行為は成立しなくなり、慰謝料支払義務もなくなるのです。
実務上の取り扱い
こういった主張は、実際の慰謝料請求の場面では頻繁になされます。浮気相手が慰謝料の支払いを拒否する際の常套手段です。
婚姻関係が破綻していると思った理由は、ほとんどの場合、浮気をした配偶者から、「もう何年も前から口もきいてない」「今、離婚の協議中」「来月別れる」などと言われて、それを信じたからというのが圧倒的に多いのではないかと思います。
では実際にそのような反論がされたとして、どの程度有効なのかが問題です。
私が関わってきた慰謝料請求案件では、実際に婚姻関係が破綻していなかったケースに限れば、その反論によって請求を諦めた、または認められなかったという事案は1つもありませんでした。
「婚姻関係が破綻していると信じた」という主張は、相当ハードルが高いと思います。
つまり、実際には婚姻関係は破綻していないのに、「破綻していると聞いてそれを信じた」という反論は、あまり意味がないということです。破綻していると言われてそう信じたにしても、そう信じることについて「過失」があったと判断されるのです。
いい大人なのだから、そんな簡単な嘘にだまされる方にも問題があると裁判所は考えているのでしょうか。